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東北再出発応援日記バックナンバー

北村東北財務局長
 東北財務局長の北村です。
 これから多くの方の声をお聞きし、試行錯誤しながらも我々の役割、我々にできることは何かをたえず考えながら全力で取り組んで参ります。

 2013.1.23


 仙台平野には農地が広がり、ひとめぼれを中心とする稲作をはじめ、野菜や花きなど多彩な農業が営まれていましたが、沿岸部は津波被災により壊滅的な被害を受けました。災害危険区域とされた場所も多く、また除塩作業にも相応の時間がかかります。こうした中で、新しい農業の形を追求する人たちも出てきています。
 名取市に一昨年の11月に設立された農業法人、(株)さんいちファームの代表取締役である瀬戸誠一氏は、もともとは仙台市宮城野区の兼業農家でした。仙台市の農地は津波被害が甚大で、新たな資金調達等の面で課題を抱え個人での農業再開は困難な状況にあったそうです。

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 こうした中、植物工場事業で実績のある東京の環境コンサルティング会社、(株)リサイクルワンが名取市や岩沼市で農業の復興支援(野菜の水耕栽培)事業を考えていることを知り、話し合いを進め連携することとなったそうです。瀬戸氏を含め農家3名が専業で経営にあたっています。3名とも自宅が被災して仮設住宅に入居しており、名取市に通勤している形になります(社名の「さんいち」は3名の名前にすべて「一(いち)」がつくことにちなんでのもの、とのことです)。



 当社は、現在名取市の津波被災した農地に野菜工場(ハウス3棟、約6,000m2)を建設し、主にレタスやホウレンソウ、ベビーリーフ、サンチュ、クレソンなどの葉物野菜の水耕栽培を行っています。その生産能力量はレタスに換算すると1日約2,000個弱程度で、当然ながら季節によって生育期間が違うため、同じ野菜でも季節ごとに出荷サイクルの調整が必要となります。それでも、水耕栽培は同じ場所で連作ができ、連作障害も殆どないことから、回転率が高く生産性が良いとのこと。また播種してから何日後に出荷できるのか日程感がわかるので、通年でタイムリーな商品提供が可能になるとのことです。無農薬栽培にこだわった結果、値段は2~3割高いようですが、売れているそうです。瀬戸社長のお話では「最初はなかなか理解されずにスーパーに卸した野菜が返品されることもあったが、最近は返品もなくなった。無農薬の良さが消費者に徐々に伝わってきたと感じている」とのことでした。また当社が栽培するレタスなどは丸くならずにリーフ状に育つため、廃棄する量が少ないことも好評なようです。現在3棟あるハウスのうち1棟は外食チェーン向けの専用棟になっているようで、大手と契約できたことで経営は安定してきているとのことです。
 当社の水耕栽培施設は、採算性を高めるため、(1)ハウス全体ではなく、植物の根のみを温度管理する(2)施設の架台等を全て再生プラスチックを活用する等によりイニシャル・ランニングの両面でコストを抑えた省エネシステムとなっていることも特徴です。
 瀬戸社長は、「この地域で仲間を増やし、ハウス施設をもっと大きく広げていきたい。今は地元の農家が自分たちが成功するのかどうか様子を見ている状態だが、成功すれば一緒にやりたいという人も出てくると思う」「現在は野菜の栽培だけなので1次産業だが、いずれは野菜の加工にも手を広げ6次化を目指したい」と語られています。
 当社の取り組みは、被災地における農業の新しいビジネスモデルになるものと評価され、昨年11月には「七十七ニュービジネス助成金」を受賞しました。当社の今後の更なる飛躍を期待したいと思います。

 東北の復興・再生の柱になると期待されているのが、再生可能エネルギー(の開発)です。随所で東北のポテンシャルを指摘されている「風力」「地熱」に比べ、「太陽光」はどうなんだろうと考えていたところ、足元にその動きを見つけました。

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 仙台市にあるスマートソーラーインターナショナル(株)は、シャープの元ソーラーシステム事業部本部長から東京大学先端科学技術研究センター教授に転身された富田孝司氏が平成21年に設立したベンチャー企業です。当社が仙台市を本拠としたのは、大崎市にある企業の工場の一部を借りることができたことに加え、東北大学との連携や優秀な技術者を確保できることにあるようです。




 富田氏が東大先端研で開発した当社のソーラーシステムは「追尾集光型」で、効率的に太陽光を集めることができるのが特徴です。一般的にソーラーシステムは半導体(シリコン)等部材のコストが高いようですが、当社のシステムだとその半導体の使用量も少なくなりコストダウンが可能となるとのこと。当社のシステムは発電量が従来の1.5倍になることに加え、同時に熱エネルギーも回収できるため、総合的なエネルギーの変換効率が従来型の約3倍となり効率的なシステムであることから、建物の空調や農業、水産業(養殖)などへの活用が期待されています。また、一般にメガソーラー開発には広大な土地が必要になりますが、「土地の狭い日本では当社のような高効率なシステムが有効となる」と富田氏は語られます。勿論、メガソーラーが他のエネルギー源と伍していくにはまだまだコストダウンを図る必要があります。そのためにも量産化によって生産コストを下げていくことが不可欠の要件となるようです。

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 富田氏のお話によれば、東北は南の地域(静岡県や瀬戸内海)に比べ雪や曇りの日が多いことから太陽光発電は向いていないと言われることがあるが、三陸沿岸部は日照に恵まれている北海道の十勝地方や静岡県と遜色がない位の日照量があるので、太陽光発電の開発可能性は十分にあるとのことです。
 「被災地の三陸沿岸部は土地も狭く、そこでの農業や水産業の復興のためには太陽光発電を活用して生産性を向上させることが重要であり、当社のシステム(太陽光発電+熱エネルギー)が有効だと考える」と語られます。
 当社も他のベンチャー同様に資金の確保が課題です。東京大学エッジキャピタルをはじめ様々なところから研究開発費を調達してこられたようです。今後もそうした課題を乗り切り、当社のもつ技術が東北復興の一助となり、ひいてはメガソーラー分野の主流システムとなることに期待したいと思います。

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