ページ本文

東北再出発応援日記バックナンバー

北村東北財務局長

 東北財務局長の北村です。
 これから多くの方の声をお聞きし、試行錯誤しながらも我々の役割、我々にできることは何かをたえず考えながら全力で取り組んで参ります。

2013.3.19

 東日本大震災から3月11日で2年が経過しました。震災からの復旧・復興はまだら模様ながら着実に前進しています。一方で、東北地方は震災前から人口減少や高齢化といった社会構造変化に直面していました。それに加えて今回の複合的な震災を経験した東北は、否が応でもこれまでとは違う新しい東北の姿を目指さざるを得ないものと考えています。

 東北は高齢化の進んだ地域です。総人口に占める65歳以上の人口割合(平成22年)は、宮城県を除く東北5県で全国平均(23.0%)を上回っており、特に秋田県が29.6%(全国第1位)、山形県が27.6%(第4位)、岩手県が27.2%(第6位)と全国上位に位置しています。将来推計(平成47年:国立社会保障・人口問題研究所)では秋田県、青森県、岩手県がそれぞれ第1位、第3位、第4位を占めると予想されるなど、さらに高齢化が進む見込みです。
 東北地方の今後の産業構造を考える際には、こうした高齢化に対応した分野でのサービス供給が増加していくことが予想されますし、より積極的にとらえれば、全国に先駆けた高齢化対応によって成長分野となる可能性もあるはずです。

 仙台にある東北福祉大学の関連法人である社会福祉法人東北福祉会は、同大学が標榜する「これからの福祉のあり方」を世に問う実践施設として数多くの施設を運営しています。その一つである、特別養護老人ホーム「せんだんの館」は、フィンランド型福祉を取り入れたモデル施設として広く注目を集めています。なお、仙台市とフィンランドのオウル市は姉妹都市だそうです。
 当館は平成16年にオープンしていて、震度7までの耐震構造でしたが、東日本大震災では西館に大きな被害(半壊判定)が出ます。西館は元々沼地だったことが影響したのではないかとのことでしたが、国(厚労省)の災害復旧補助によりその年の夏には復旧しています。

写真0

 来たる4月1日の同町の区域再編後も同町の面積の約8割は5年以上帰れないと見込まれている「帰還困難区域」に指定されますが、将来の住民の帰還へ向けて、まずは海側の「避難指示解除準備区域」でのインフラの復旧に着手すべく、業者に復旧事業の設計調査の委託をするとともに、南相馬市に宿舎を設置して、上下水道、道路、農地の担当職員20名程にそこから浪江町に通ってもらう予定だそうです。特に、下水道の終末処理施設の被害が甚大で、昭和50年代前半から供用開始した下水管は老朽化も進んでいたため被害が大きいようです。復旧に要する費用は当面は積み上げた剰余金等を取り崩して賄うにしても、東京電力の賠償金を一刻も早く支払ってほしいと語られます。また馬場町長は、食品についてはきちんと検査をしていても県内産食品を敬遠する風潮が特に若い人に見られることに心を痛めておられます。
 住民へのアンケート調査では、4割の人が帰還しないと答えていて、帰還までに要する時間が長くなればなるほど離れていく人は多くなると馬場町長は考えておられるようです。避難している浪江町民と避難先の地元との間のトラブルについては多くを語られませんが、避難先の地元の皆様が複雑な心情にあり、各地の浪江町民が肩身の狭い思いをしているとすれば、やりきれない気持ちがします。二本松市にある浪江町役場に立ち寄っている住民の方々の表情は穏やかに見えましたが、そこだけは他の目を気にしないで済む安心感の裏返しなのかもしれません。
 浪江町ではいわき市や南相馬市の周辺と、二本松市などの中通りに町外コミュニティ(仮の町)の整備を要請する考えのようです。前例のない試みであり難しい課題もありそうですが、一日も早く住民が安心して生活できるコミュニティが確保できるよう祈ります。

写真1

 館内には、北欧型福祉の特徴である自立=残存機能維持を実践する施設として、予防介護のリハビリ施設(流水プール・スリング)やトレーニング室があるほか、地域交流ホール、カフェテリアなどがあり、地域住民がヨガやフラダンス、陶芸教室などの活動に利用するなど地域のコミュニティセンター機能も発揮しているようです。
 同館総合施設長の中里仁氏の話では「入居者のうち女性の比率は7~8割。ご主人を看取って一人になり、デイサービスやショートステイを利用した後に入居する方が増えてきている」「この仕事に携わって30年になるが、当時の施設は雑居部屋でまるで刑務所のように見え、隔世の感がある。これからも老後の住まいとしてここならいいかと思える施設、入りたくなる施設を目指していきたい」とのことでした。利用されているお年寄り(確かに女性が多い)にお話を伺っても、和気藹々と実に楽しく過ごしておられました。当館の入居待機者が約800人いるとのお話が納得できます。
 せんだんの館の隣には、仙台フィンランド健康福祉センター研究開発館があります。仙台・フィンランド両地域の企業・大学等との連携により、高齢者の自立をサポートする社会環境構築をテーマに、ITを活用した付加価値の高い健康福祉機器・サービスの研究開発・事業化を進めるインキュベーション施設です。館長はフィンランド大使館商務部ビジネス開発ディレクターを兼ねるユハ・テぺリ氏(医学博士)です。
 副館長の吉村洋氏によれば、研究開発館では高齢者の精神的・身体的な自立を支援することを目指し、(1)福祉機器の開発・販売、(2)研究会やセミナーの開催による事業開発の提案、(3)公募型委託事業、(4)インキュベーション用のプロジェクトルーム(全8室)の提供等を行っています。日本進出を図るフィンランド企業も多いようですが、薬事法の壁や両国の社会サービスの仕組みの違いなど課題も多いそうです。また、大学と産業の橋渡しにも苦労されておられるようで、例えば、大学は複雑なロボットを作るが、現場はそこまで求めていないとか。

写真2-1

写真2-2

 1階のコ・デザインスペースには入居企業等が開発した機器・サービスが展示されています。ここで開発された福祉機器をお隣のせんだんの館で使用してその評価をフィードバックできることもメリットのようです。日本における福祉の新しいイメージが膨らんでいくように感じました。

 山形市に本社がある(株)タイヨウは、太陽建設(株)が平成13年に設立した高齢者向け事業サービスのための会社です。山形市を中心に、介護付有料老人ホームや高齢者専用賃貸住宅(中規模多機能施設)、短期入所生活介護・通所介護施設など16カ所の事業を運営しています。また両社の代表取締役の安藤政弘氏は社会福祉法人たいよう福祉会理事長も兼ねておられ、東根市に特別養護老人ホーム(ソーレ東根)を運営しておられます。

写真3

 安藤氏によれば、高齢者医療は国の施策として在院日数の短縮を図るため在宅医療へシフトしてきており、これからは単なる住宅ではなく、医療・介護連携型の施設が求められると考え、まずは昨年5月、仙台市若林区で医療・介護サービス付き高齢者専用住宅(定員40名)をオープンしたとのことです。当初は地の利のある山形県内での設置を検討されたそうですが、山形では協力してくれる医師が確保できず、マーケットが大きく、在宅医療に理解を示す医師が見つかった仙台市でまずはスタートさせたとのことでした。仙台市で認知度を高めれば、いずれ山形の医師会の理解も得られるとのお考えです。因みに、頂いたパンフレットによれば、同住宅への入居時の敷金12万円のほか、月々の利用料金(食費含む)は14万円弱となっています。介護保険料の一割負担は別のようです。
 また、少子化で廃校となった小学校(大石田町立駒籠小学校)の校舎をリニューアルして特養老人ホームへ再活用する事業の準備を進めておられます。25年度のオープンを目指しておられるようです。
 お話をする中で、安藤氏が医療・介護が必要な低所得高齢者のための施設が都会を中心に絶対的に不足している現状に危機感を持っておられることがわかりました。群馬県での無届け老人ホーム火災事故で明らかになった構造的な問題に東京都などの行政が依然として対応できていないのではないか、都市部と地方が連携した福祉サービスの提供が必要と熱く語られる姿に、この地域での介護福祉を担っていく事業者としての覚悟を感じました。

写真4

 福島市に本社を置き広く東日本を営業エリアとする、こころネット(株)は石材販売を主とするカンノ・グループ(石のカンノ等)と、冠婚葬祭を主とするアイトゥアイ・グループ(たまのや等)が2005年11月に経営統合し生まれた会社です。2012年4月には東北で震災後初めての大証ジャスダック市場上場を果たしています。
 「トータルライフサポート(人生そのものの応援)」を社是とする当社が新しく事業展開を開始したのが、介護事業です。代表取締役社長の齋藤高紀氏にお話を伺ったところ、特養の参入条件が厳しいのに対し、比較的民間からの参入がしやすいと判断された「サービス付き高齢者向け住宅整備事業」(国土交通省所管)に着目し、まず福島市に30戸からなるサービス付き高齢者向け住宅の建設を予定し、そこで運営ノウハウを蓄積し、今後県内外に拡大していくことを検討しているとのことです。成長分野ではあるが、競争が激化していくことも予想し、スタッフによるサービス面での差別化に力を入れたいと語られていました。

 今後も高齢化の進展とともに介護福祉事業は拡大を続けていくものと思われます。地域での雇用の受け皿としても重要ですし、東北地方の産業構造の観点からみても、経済社会の変化に対応した東北らしいサービス産業の柱として発展していってほしいと願います。

バックナンバー

PDFファイルをご覧いただくにはAdobe Reader(無償)が必要です。
ダウンロードした後インストールしてください。

Get Adobe Reader