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東北再出発応援日記バックナンバー

北村東北財務局長

 東北財務局長の北村です。
 これから多くの方の声をお聞きし、試行錯誤しながらも我々の役割、我々にできることは何かをたえず考えながら全力で取り組んで参ります。

2013.4.9

 東北は豊かな自然と山海の食の恵みに加え、歴史ロマンに彩られ、多くの温泉地を抱え、また心のこもったおもてなしによって古くから魅力ある観光地として愛されてきました。震災による風評被害の影響で全体として観光客の足が遠のいていることは誠に残念なことです。
 東北各地の観光施設の入込状況について、震災前(平成22年3月~23年2月)との対比の推移をみると、世界遺産に登録された平泉がある岩手県は回復が早く震災前を上回っていますが、その他の5県は持ち直してきているものの伸び悩んでおり、東北合計では震災前の8割前後で推移しています。

 福島県では原発事故の影響もあって観光客が大幅に減少しました。いまだに15.3万人の県民が避難生活を余儀なくされている状況の下ではやむを得ない面があります。それでも、元気に立ち上がり東京を始めとする全国からの人気を博している観光スポットがあります。いわき市にある「スパリゾートハワイアンズ」がそれです。
 常磐興産(株)が経営する同施設は、昭和41年から常磐ハワイアンセンターとして親しまれてきました。映画「フラガール」のヒットはまだ記憶に新しいところです。
 ハワイアンズも震災によって大きな被害を蒙りました。同社常務取締役の豊田和夫氏のお話によれば、3月11日の地震(震度6弱)では、構造物には異常がなく配管設備や内装の損傷にとどまりました。当時訪れていた約1500名の客も全員無事で、東京方面からの客約600名は2泊無料で宿泊してもらった後、東京までのルートを社員が実走し安全確認をしたうえで、専用バスで東京まで送り届けたのだそうです。当初は6月にも営業再開できる見通しでした。
 ところが、4月11日に直下型の地震(震度6弱)が再び襲います。いわき市内の被害は軽微であったにもかかわらず、当施設敷地内に断層による変位が生じ、最大で約80cmの高低差が生じます。断層周囲の建物(ウォーターパーク、アミューズメント館等)に大きなダメージを受けてしまいました。幸い休館中であったため、客はおらず復旧作業に当たっていた従業員も無事でした。
 建物のうち、各種プールを擁するウォーターパークは、無柱空間のダイヤモンドトラス工法(注:旧炭鉱時代の技術で、中間柱のない構造物に使用)による鉄骨造りのため築45年を経過していても健全でしたが、施設内を走っていた断層により高低差が生じており、構造物へのストレスの解消を図るための工事(ジャッキアップ、ジャッキダウン、構造補強等)が必要であり、復旧工事に最も時間を要した部分です。復旧のプロセスでは、構造上は問題ないものの、より安全性を高めるため座屈(注:長い柱などで一定の荷重を超えると大きなたわみを生じること)防止設備を設置したそうです。

写真1

 23年10月には、ホテルの一部とウォーターパークを除く温泉施設の営業を再開します。フラガール舞台も仮舞台として設置されます。24年2月には、震災の影響で工事が遅れていた新ホテル「モノリスタワー」の完成とウォーターパークの復旧工事完了によりグランドオープンに漕ぎ着けます。
 営業開始までの間、フラガールは、避難所への慰問公演を皮切りに東北各県の被災地を含め「全国きずなキャラバン」として全国26都市、125か所を駆け巡ります。フラガールの全国公演は、常磐ハワイアンセンター開業前の昭和40年以来、実に46年ぶりだったそうです。(往時の全国公演の様子は前述の映画に出てきます。)

写真2

 フラガールたちの未来をあきらめない気持ちとふるさと福島への熱い想いは全国に伝わり、原発風評被害解消の意味からは関係者に大きな勇気を与えたように思えます。因みに、フラガールの養成は、入社後、「常磐音楽舞踊学院」にて、フラやタヒチアンなどの民族舞踊、日本舞踊、茶道などの課程を2年間受けるのだそうです。
 ハワイアンズの入場者数は、平成19年度の161万人(映画フラガール効果)には及びませんが、22年度133万人、23年度37万人、24年度140万人と順調に回復しています。客足は1月、2月と少し落ち込んだそうですが、3月は高校生や大学生の卒業旅行により持ち直しているとのことです。
 今年4月からフラガールの発案により、小学校3、4年生を対象に学校めぐりを行う予定だそうです。全国きずなキャラバンの時は依頼主に交通費のみ負担をお願いしていたケースもあったところ、今度は全て手弁当だそうです。フラガールは4月に47期生5名が加わり総勢31名が実際に舞台に立つことになることから、ハワイアンズ公演の合間を縫って5名程度は派遣できる見込みだとか。
 豊田常務のお話では、復旧に当たっては福島県緊急雇用創出基金やグループ補助金のお世話になったほか、第三者割当による優先株発行(「ふくしま応援ファンド」など3ファンド)と金融団の協調融資の支援を受けたとのことで、関係機関への謝意を表しておられました。今後の課題としては、まず地域貢献としてハワイアンズを通して交流人口の拡大を図り、観光産業のオピニオンリーダーとして地域に観光客が流れるようにしたいと語られます。皆さん、ハワイアンズを入り口に是非福島、東北へ足を運んでください。
 東北にはいい温泉が数多くあります。幕末の戊辰の役の際に、奥羽越列藩同盟の公議所が置かれたことで知られる宮城県白石市の山間にある鎌先温泉もその一つです。伝承600余年の老舗旅館「湯主一條」を訪ね、当館20代目当主の一條達也氏と女将千賀子氏のご夫妻にお話を伺いました。当館は客室数は24と少ないものの、古くから湯治用に利用されてきた本館を現当主がリニューアルし、個室料亭として客室とは別の場所での個室での食事を提供するなど、ゆとりを持った造りになっています。この個室料亭は、木造の風情ある建物で、女将さん曰く「一度の来館で二度楽しめる」ような工夫をこらしているとのことでした。
 震災では、当館も相応の被害はあったものの、無理をすれば早期開業も可能な状態だったそうですが、あえて42日間という長期休業を決断します。この決断に至るまでには相当悩まれたそうで、阪神淡路大震災を経験した有馬温泉「御所坊」の金井さんに電話で当時の対応等を聞いたところ、「まわりが右往左往しているときは、動かない」とのアドバイスを受けます。またJR東日本に復旧見通し等を聞いたりして情報収集に努めたそうで、結局、新幹線再開の時期まで休業し、予定していた工事を前倒しで実行し清掃を徹底することによって万全の態勢でお客さんをお迎えする準備をしようと決断したそうです。ラジオで「東日本大震災復興特別貸付」の情報を入手し、日本政策金融公庫と商工中金からいち早く運転資金の確保ができたことも有難かったと語られます。
 一條氏は東京の外資系ホテルでの勤務経験の後、1999年に旅館を引き継ぎますが、旧来の旅館のあり方には疑問を持っていたそうです。部屋食で、一定の時間になったら女中さんがズカズカと上がってきて、布団を上げて、食事の準備をするなど、プライベート空間が損なわれるだけでなく、ゆっくり自分の時間を過ごせないと感じていたとのこと。またバブルの時代を経て、旅館業はあまりに過剰になりすぎた。一斉に来て、一斉に入浴し、一斉に宴会し、一斉に帰るというサービス供給者としては儲けの良い団体客の受け入れに注力していた分、団体客減少の影響をもろに受けているとも。

写真3

 ホテルは設備もサービスも常に新しいものを追求するが、旅館は古いものを残しながら中身を新しくすることができる。外国人などは文化や歴史を感じるために当館にやってくる。その点では、日本は消防法や建築基準法などにより歴史的文化財を残しにくいのではないか。寺院は古いものが残っているが、旅館はそうではない。一方で、古く伝統ある旅館は生き残れると一條氏は考えています。鎌先温泉には数軒の旅館があるだけで、民家がない。生活臭がなく、つまり「非日常」である。旅館はそのものが文化であり、お客さんには非日常の文化を感じてほしい。
 今後は「生き残り」をキーワードに考えていきたい。白石と蔵王の連携を深めるなどして、湯主一條としての生き残り、鎌先温泉としての生き残り、白石という地域としての生き残り、仙南エリアとしての生き残りを目指していかなければならない。大きく儲けるのではなく長く儲けて、次世代につなぐことが使命であると考えているそうです。
 お話の中で、消費税に話題が及びました。旅館業は本来「込み」料金が基本であり、団体客などをターゲットにする大型旅館などは端数が出ることが一番困るはず。当館の場合、消費税アップにともない外税方式に切り替えられるよう価格設定の見直しを進めつつ、外税方式で料金に端数が出ても当館を利用してもらえるようにしたい。当館の付加価値を認め利用してくれる客をターゲットにすること、当館に来ることがデスティネーション(目的)となることを目標にしたい、一條氏はそう語られます。
 この4月からJRグループを中心に展開される「仙台・宮城デスティネーションキャンペーン」が始まりました。ここにしかない文化と歴史を味わいに、是非宮城へ、東北へお越しください。

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