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東北再出発応援日記バックナンバー

北村東北財務局長

 東北財務局長の北村です。
 これから多くの方の声をお聞きし、試行錯誤しながらも我々の役割、我々にできることは何かをたえず考えながら全力で取り組んで参ります。

2013.5.31

 震災からの復興の先にある、東北地方の社会経済の将来像を展望してみると、いくつかの柱が浮かんできます。「再生可能エネルギーの供給」、「農林水産業の6次化(農商工連携)」、「高齢社会対応ビジネスの展開」に加えて、「自動車関連産業の集積」が求められているものと思います。
 東北地方の製造業は、製造品出荷額等の産業別構成比でみると、食料品等(東北15.6%、全国11.7%)、電子部品・デバイス(東北12.8%、全国5.8%)のウエイトが高く、輸送用機械は低い状況(東北7.4%、全国18.8%)にありますが、近年、その構成に変化が生じつつあります。

別表

 生産活動の推移でみても、従来、電子部品・デバイスと輸送機械のいずれについても、東北地方の生産活動は全国の動きと概ね連動してきましたが、近年、東北の輸送機械の生産水準は全国を大きく上回って推移しています。

別図

 東北の自動車産業の中心は、昨年7月に東北に生産拠点を置くトヨタ系3社(関東自動車工業、セントラル自動車、トヨタ自動車東北)が統合して誕生したトヨタ自動車東日本(株)であることは言うまでもありません。今や東北は中部、九州に次ぐトヨタグループ第3の拠点と位置付けられています。

 岩手県金ケ崎町にある当社の岩手工場を見学しました。当工場では、アクアを中心にラクティス、イスト、ヤリスセダンといった、いわゆるコンパクトカーを生産しています。当工場で全量生産しているアクアは2012年度の車名別国内新車販売台数(28万2660台)で初めて首位に立ちました。前述した最近の東北の輸送機械の生産活動をアクアがけん引していることは明らかです。
 アクアの出荷先は約85%が国内向けで、海外では米国が主なターゲットとなっているようです。当工場での完成車のうち、大部分(96%)は仙台港から横浜港、田原港(三河)、名古屋港などを経由して全国へ運送されています。こうした物流をサポートすべく、平成22年11月より「自動車輸送特区」が岩手・宮城両県に認定され、完成車運搬用トレーラーの積載可能台数が6台から8台に増えるなど、輸送効率化が図られています。

写真1

 佐野俊一工場長(当社執行役員)にご案内いただき、工場内を見せていただきました。当工場には2700人の従業員が働いています。佐野工場長によれば「世界ナンバーワンの人財(当社では人材を人財と称するとのこと)づくりを目指している」とのことで、例えば、作業効率アップや省力化のための改善テーマを設定し、改善方法に関するコンテストを開催するなど、効率化に資するとされたもの(これを「からくり」と称する)は当工場で実践されています。一つのラインで複数の車種や同車種でも仕様の異なるものを生産するため、様々な工程で「からくり」を使った作業効率化が図られています。これらの「からくり」はそれ自体で十分にビジネスになりそうな創意工夫に富んだ取組みです。
 また、産学官連携では、岩手大学、岩手県立大学、東北大学等と13テーマについて共同研究が行なわれているようです。
 受注生産のため、生産台数は月単位で変動させていて、これによりタクトタイム(1台生産するための所要時間)が変わります。タクトタイムを落とす場合は、1人で行う作業工程を増やし、全体の作業人数を減少させることになります。そのため、少なくとも前後の工程の作業はできるような教育がなされているとのことです。こうした質の高い生産プロセスが日本のものづくりを根底で支えていることを実感しました。

写真2

 トヨタ自動車東日本(株)の本社は宮城県大衡村にあります。カローラアクシオやカローラフィルダーなど、やはりコンパクトカーの生産を手掛ける宮城大衡工場を併設しています。岩手工場と併せれば、当社は東北で約50万台の生産能力があることになります。
 本社に白根武史取締役社長を訪ね、お話を伺いました。白根社長は「東北人の真面目さ、粘り強さはものづくりに不可欠の資質であり、当社の一番の財産である。トヨタ東日本の誕生により、更に注目度が上がり、地域の優秀な人財を獲得できるようになっていることは誠にありがたい」と述べられます。また、東北には道具や設備を自分でメンテナンスし、手足のように使う風土・文化があり、これはものづくりの原点である。自動車の生産には鋳造、鍛造、ダイカストなどの素形材が重要で、これができる企業が東北にあれば、コストメリットがあることから加工メーカーが東北に集積してくる。東北には南部鉄器などの伝統産業があり、対応できる企業がある、との見方を示されておられます。
 白根社長は、物流の効率化へ向けての地元の取組み(仙台港へのアクセスとしての高速ICの新設、前述の特区制度など)を大変評価しておられました。願わくば、エネルギーコストの低減が図れないかとの希望も表明されておられます。
 最近の東北の輸送機械の生産水準は全国と比べても高く、トヨタの中でも東北のウエイトは今後益々高まるのかと伺ったところ、「アクアの増産効果によるものだが意図したものではない。勿論、コンパクトカーは東北、というグループ内でのステイタスは堅持したいと考えており、今後ともユーザーのニーズには応えていきたい」とのお答えでした。

 トヨタの第2の拠点である九州との違いを伺ったところ、「九州ではレクサスなどの高級車を生産しているが、そもそも同業他社の進出が先行していた地域であり、地域としての生産台数の規模は九州の方が格段に大きいし、部品の現地調達も容易。他方、当社は関東自動車やセントラル自動車といった独立した会社が統合してできた経緯もあり、開発・設計・デザイン部門を自前で有することが特徴。地元のニーズと技術力を車づくりの設計に反映しやすいという当社の持ち味を生かしたい」との興味深いお話がありました。
 当社が掲げる、部品の現地調達比率をアップさせるとの目標の実現には地元のものづくり中小企業の参入が求められますが、他方で地元の中小企業からはトヨタの壁は高いとの悲観論も聞こえる、と伺ったところ、「一次下請け(ティア1)は域外のサプライヤーにお願いすることが多いが、そこに供給する部品はできる限り地域の企業に期待したい。当然ながら三河を始めとする域外他社との競争に打ち勝つことが条件だが、東北にも技術力では決して負けない企業はある。大和にエンジン工場ができたことも地元企業の参入のチャンス。なお、東南海地震のリスク管理から大手部品メーカーは拠点を分散させる検討をしており、今がティア1を引っ張るチャンスでもある」。
 東北の製造業で主力の電子部品・デバイス分野の企業が参入する可能性については、「家電に部品を供給されている企業は、その商品性から短期間で投資を回収するビジネスモデルになっていると思うが、自動車は試作・量産・その後の交換部品供給の期間まで含めれば、足掛け20年の長い期間のお付き合いになる。そうした長期的な視点で取り組まないと競争力は発揮できない。例えば、設備投資の償却を1年で行うような見積もりではコスト競争力がないと判断される。もっとも、すべての設備を自動車向けに乗り換える必要はない。従来の仕事と併存させれば可能ではないか」とのご説明でした。
 部品の現地調達比率向上に向けては、当社はこれまでに東北(6県+新潟県)の企業に幅広く声をかけ、アクアの分解展示商談会(部品を公開しての説明会)を開催するほか、愛知県のサプライヤー(ティア1)とのビジネスマッチングの取組みを重ね、徐々に実績も出てきてはいるようですが、まだまだこれからの課題のようです。

 東北の産業構造の将来像を考えるときに、自動車関連産業の集積を進めていくことは大きな命題だと思います。以前触れたように(2012.12.10のバックナンバー参照)、この分野での製造品出荷額等に対する付加価値額の割合を高めていく観点からも、部品納入企業として東北の企業がいかにして参入を果たしていくか、引き続き注目していきたいと思います。

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