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「がんばろう東北」レポートバックナンバー

岸本東北財務局長

2013.10.21 農業を成長産業にするための連携強化

1 はじめに

 震災からの復興と東北経済の活性化のためには、東北地方の基幹産業である農業が活力を高めて、地域の成長を引っ張っていくことが重要です。
 そこで、東北地方において農業の先進的な取組みを行っていらっしゃる方々を始めとして、関係者の方々から、お話を伺ってまいりました。
 お忙しい中、お時間を割いてくださった、宮城県名取市の株式会社さんいちファーム、JA秋田中央会及びJA全農あきた、秋田県北秋田市の有限会社藤岡農産、秋田県大潟村の株式会社大潟村あきたこまち生産者協会、宮城県山元町の農業生産法人株式会社GRA、青森県平川市の株式会社ヤマダイ、JA全農みやぎ、そのほかの皆様に、厚く感謝申し上げます。

2 農業の課題

 平成22年(2010年)2月1日現在の東北の農業就業人口は48万7千人で、平成17年(2005年)に比べ13万4千人減少しました。平均年齢は65.4歳となり、平成17年(2005年)に比べて2.4歳上昇し、農業就業人口の高齢化が進む状況が続いているということです。若い人の参入が少なく、農業の担い手が不足することは、将来の農産物供給に対して不安を抱かせる深刻な問題です。
 若い人が農業に参入することが少ないのは、基本的に、生産物の販売価格が相対的に安いことや、生産コストが相対的に高いことから、収益性を高めることが容易でなく、将来にわたって農業で生計を立てていくことに不安があるからであろうと思われます。

3 先進的な取組みから学ぶこと

 このような課題に対して、先進的な取組みをなさっている方々は、様々な工夫をされているようです。以下に、私たちの理解したことをまとめてみます。なお、それぞれの点について、異なる御意見の方もいらっしゃるかもしれないことを念のため申し添えます。

(1)6次産業化

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1. 市場の開拓
 生産物の販売価格を高くするためには、売れるものを作るのが一番です。「自分が決めている価格で売れるあてがないものは、作らない。」という言い方をされる方もいらっしゃいました。一般的に顔の見えない市場全体を相手にするのでなく、まずは、自分が売る商品に見合うターゲットを明確に意識して、市場を開拓することから始めるという考え方のようです。
 市場に受け入れられるためには、ある程度の規模で安定的に出荷できる態勢が整備されている必要があり、まずそれが課題となるようです。
 また、自分の商品の市場を確保するためには、ブランド化や差別化は有益で、多くの方がそのために様々な努力をされています。例えば、米を売るのでも、一般的な銘柄に止まらず、どこのどういう米ということで差別化して売るというようなものです。マスコミで報道されることも効果があるようです。しかし、実際のところ、農産物について、ブランド化や差別化を進めることは、なかなか容易ではないようです。
 結局、市場の開拓に簡単な手法があるわけではなく、東京を始めとして、ターゲットとなる地域での、人手と時間をかけた地道な営業活動が基本であると感じました。
2. 加工による付加価値
 農産物をそのまま出荷するのでなく、加工して、付加価値を高めるということも試みられています。
 ただ、加工販売は、これまでいろいろやってきたけれども、多くは失敗したとして、慎重な見方をされる方もいらっしゃいます。誰でもするような単純なものは、安くでしか売れず、投資が回収できないで終わりがちだということです。また、衛生管理等で市場から求められる水準も高度になっているようです。
 積極的な方は、市場のニーズを踏まえた商品を開発しようと、アンテナを高くはって、取り組んでいらっしゃるようです。その際、農業の片手間のような位置づけではなく、既存の食品加工会社であれ、あるいは関連分野からの展開であれ、加工販売を専門に行う会社が中心になると効果的なようです。
 また、他と差別化された商品を開発するためには、大学や研究機関と連携して、最新の研究成果を取り込んだ技術を応用することが有益な場合もあるようです。

(2)生産の合理化

1. 大規模化
 販売農家1戸当たりの経営耕地面積は、増加傾向にあり、平成23年(2011年)に2.07haとなっています。水田作作付延べ面積規模別収支をみると、経営規模の拡大に伴って農業所得は増加し、10ha以上15ha未満の規模では、農業粗収益2004万円、農業所得726万円となっています。大規模化は、効率的な経営のために必要なことだと思います。
 但し、10haで利益が出ないまま20haに拡大しても、急に利益が出るようになるわけではなく、まずは、10haでも利益が出るようなビジネスモデルが必要であるという見方もありました。また、安定経営という観点は別として、コスト削減効果だけを言うのであれば、20ha程度を超えるとあまり効果がないという見方もありました。

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2. IT等の新しい技術の活用
 農業の技能は、ベテランの農業者が、経験の蓄積として保有されていることが多く、なかなか次世代に伝承していくことが難しい面も多いようです。従来は、家族経営の中で、前の世代から次の世代に、時間をかけて技能が伝えられてきました。しかし、外の世界から新たに農業に参入する人は、このような機会がありません。
 このような文字化されていない経験的な技能を、IT技術を用いて数値化していくことを試みている方がいらっしゃいます。これによって、新規参入者でも、農業に取り組む基礎ができることになります。
 そのほか、乾田直播により育苗や代かきのコストを削減する技術等に取り組んでいる方もいらっしゃるようです。

(3)会社化(法人化)

 これらのことを実際に行おうとすれば、もはや家族で経営していくことは、困難が多いと思います。会社の形で経営することによって、生産のほか、市場開拓、加工等をある程度分担することができます。多くの人が働くことができ、地元の雇用拡大に貢献します。
 また、経験のない新人でも、会社に入って、給料を貰いながら、日々の作業の中で技能を習得することができるので、人材育成がやりやすくなると思われます。会社の形にして、就労時間や休暇を定め、福利厚生を整備していくことが、若い人に就職しようと思ってもらうためには必要なことだという御意見もありました。
 会社には、多くの関係者が参画しますので、責任ある判断を行う経営者が誰であるのかが明確であることが必要です。集落営農でも、経営判断が一元化されていないと、法人化のメリットを生かしきれないようです。当然のことですが、経営者には、非常な責任があると、改めて感じました。

(4)資金調達の工夫

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 多くの金融機関も、農業を成長産業にしていくための新規事業の開拓に、意識を高くもって取り組んでいます。動産担保融資という新しい金融手法を活用したり、財務面に併せて事業面での情報提供ができるような様々な工夫をしたりしています。
 農業には、国等に各種の支援措置が講ぜられています。このような手厚い支援措置を生かすことは、収益向上に有益だろうと思われます。他方、どのように有利な公的支援措置も、知らなければ利用できないので、まずは、知る機会を得ることが必要であると思います。

4 農産学金官の連携強化

 このような各種の取組みを進めていくことが、農業を成長産業にしていくためには、大いに助けになると思われます。実際、多くの農業関係者が先進的な取組みをなさっています。
 その際、農業関係者が主体的に取組みを進める中で、産業界、大学や研究機関、金融機関、官庁等の知見を活用することが有益なことも多いように思います。このような農産学金官の連携強化のために、東北財務局としても役立つことを考えていきたいと思います。

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