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~大震災からの復興に向けて~ 盛岡財務事務所長から

平成23年10月27日

 10月18日、19日の二日間、自見金融担当大臣が大震災後初めて岩手県に来県されました。大臣は、18日には、県内の金融機関トップとの意見交換、19日には、被災地・釜石市で市長、議長等と面談し、大震災に関することのほか、大臣の地元の北九州市八幡と釜石市の関係等に関してもご懇談されました。また、被災企業にも訪問され、被災から立ち上がってこられた経緯、未だに癒えぬ傷跡、金融に関すること等について実態調査を行っていただきました。当財務事務所としても、大震災後にお迎えする初めての大臣でしたが、大震災から7ヶ月経った、これから復興に向けた動きが始まろうとしている状態の被災地の現状をご覧いただけて本当に有難いと思いました。

(金融機関との意見交換会)

(釜石市内 被災企業との意見交換)

 岩手県の沿岸被災地の現状ですが、大津波により破壊され、建物が根こそぎ流されてしまった地域に行くと、被災直後のがれき、船舶、車両等が散乱していた状況とは異なり、がれきの撤去がすすみ、ここは元々原野だったんじゃないかと錯覚してしまうような風景に変わっています。
 7ヶ月強が経過した今日でも、街の復旧・復興に向けた建物建設等の動きが中々見えず原野状態のままなのは、未だ、街のどこまでが建物が建てられるかという絵姿が見える段階にないためと言われています。現在は、被災後の街の範囲を決定することになる、これから再建される防潮堤の高さを何mにするのかとの調整が進んでいます。防潮堤の高さによって、沿岸平坦地の使える土地の範囲が異なってきます。岩手県の場合、沿岸部の多くは平地が少なく、その背後は山が迫っており、高台移転するにはこの山を切り開くしかないのですが、岩盤は固く現実には容易ではないようです。このこともあって、沿岸被災市町村の多くは今回の「千年に一度の津波」を防ぐことができる高さの防潮堤を求めていたようですが、費用対効果(次の千年のために作っても、それまでに相当な維持管理費或いは再度の建築費を要する)等から、つい最近、岩手県から、もう少し低い高さの防潮堤建設案が示されたところです。いずれにしても、防潮堤再建の問題がクリアされれば、どこに建物が建設できるということがはっきりするため、いよいよ復興に向けた街づくりが動き出すのかなと思います。最近の新聞報道等をみても、具体的な街作りに関する検討、復興計画に関する検討が各地で始まったとの記事を目にします。

(陸前高田市 市街地)

(田野畑村 街から堤防を望む)

 岩手県の経済指標をみると、被災後の春頃までは大震災により落ち込んだマイナス分を一気に取り戻すような力強い動きが見られたのですが、ここに来て特に生産に関する指標は横ばいに近いような形になっています。これは、被災地ではがれきの一時処理場までの撤去が順調に進んではいるものの、上述したように、まだ街の再建のために必須の防潮堤問題や、被災地の人々が国等の施策に期待して何が出されるかということを見守っているためと言われていますが、防潮堤の高さが定まり、これを受けて復興計画が決定され、また3次補正予算による国の震災対応の全貌が明らかになるなどによって、沿岸被災地の復興に向けた槌音が聞こえ始めるのが、そう遠くないと期待しております。
 現時点で被災地の首長の方々からお話をお伺いすると、「いよいよ復興に向けた動きが始まるが、被災地の復興のためには国の財政的な援助が絶対不可欠、是非とも財務省にも被災地の状況を理解の上、予算化をお願いしたい。」との声が強くあります。
 大震災、大津波で甚大な被害を受けた県、市町村のために、今後も当財務事務所をあげて被災地の現状に関する調査等を継続して実施したいと思います。

盛岡財務事務所長 永石 進

平成23年9月12日

 大震災から半年が経過しました。
 当時を思い出すと・・・
 財務事務所では、兎に角早く被災地に行って被災地の声を聞こう、現場を見ようということで、震災直後から何度か現地行きに挑戦しましたが、非常に高い確率で大規模余震が発生する恐れがあり、また道路の安全確認ができないこともあって通行が規制されたりして、沿岸部(最短の宮古市でも盛岡市から約100kmあります。)までは中々到達しませんでした。また、職場でも、職員の中には実家等の安否確認が出来ない者が多数おり、本当に不安な状況でした。

 ようやく大震災から1週間が経った時点で、盛岡との定期バスの運行が再開した宮古市に行くことができました。
 盛岡からは車で入りました。リアス式海岸特有の、山間部を超えて沿岸部に入るのですが、宮古市内に入っても暫くは大震災前と変わらない様子でした。しかし、海から遠くない宮古駅前を少し過ぎたあたりからは、店舗のシャッター、柱、壁が破壊され、道路に漁船、自動車が転がっている光景へと変化していきました。路上にはがれきがうずたかく積み上げられていました。更に車を進め、市内中心部で最も建物損壊等が激しかった魚市場周辺まで行くと、住宅・店舗は粉々に破壊され、大型船舶が陸に転がり、ダンプカー等の大型車輌が真っ二つに折れている惨状でした。また、市町村の首長等の話を伺うために、現地本部を訪れると、避難者、自衛隊員、救急隊員、警察官、マスコミ関係者、役所職員等でごった返ししており、大混乱していました。

(宮古市内 中心部商店街)

(宮古市内 魚市場周辺)

 半年が経った今日では、地元の人々、地方公共団体或いは自衛隊・警察や各省庁の奮闘努力もあって、緊急対応、復旧・復興に向けた動きは着実に進んでいるものと思います。
 被災市町村においては、現在、復興計画の策定に向けて、住民との意見交換等を重ねながら作業が進められています。被災地の光景からがれきが消えつつあり、被災3県では初めて避難所も解消されたものの、再生に不可欠な防潮堤の嵩上げ、高台移転問題、漁業の再生といった重要課題はまだまだ議論を要する状況ですし、被災された方々の多くは仮設住宅での生活を強いられ、大変厳しい状況が続いています。
 先日、金融庁幹部が来県された際、金融機関の応接室で、民間企業の経営者の方が津波発生直後から街が津波に飲み込まれるまでを撮影したビデオを見せていただきました。最初はじわじわと染み出すように水が押し寄せ、それがわずか数分の間に街が水没するまでを撮影したビデオで、撮影者の悲鳴、泣声が録画されていました。私も映像をじっと見ていて、涙が流れました。
 大切な家族をなくされた人々、被災された人々の心の傷はどれほどかと案じられます。被災地支援に携わる私たち公務員は、このことを常に心して業務に当らないといけないと思います。私も、岩手で精一杯頑張りたいと思います。

(陸前高田市市街地 震災直後)

(現在)

 先日の福島からのレポートにもありましたが、東北の基幹産業の一つである観光の振興・再生問題は、大きな、重要な問題です。例年、これからの時期は、北海道、関東方面からの修学旅行生が多数来県し、県内各所には集団で街を散策する姿を見かけます。盛岡市内でも中心部商店街のほか、盛岡三大麺の一つであるじゃじゃ麺(他の2つはわんこそばと盛岡冷麺です。)の有名なお店では旅行ガイドを手にした学生さんをよく見かけましたが、今年はその光景は変わるのではと言われています。
 県内市町村、観光協会等の方に話を伺うと、やはり大震災及び原発問題の影響から、父兄の意向を受けて、修学旅行先を変更するという流れができているそうです。
8月上旬に話を聞いた時点では、個人旅行者についても同様の動きがあり、風評被害の影響が懸念されていました。また、沿岸部のホテル・旅館・民宿は大きく被災していることから、被災地支援のベースとなるような地区のホテル等については、8月末までは、避難者、県内外からの支援者を満室に近い状態で受け入れており、収益的には安定しているとのことでしたが、9月以降になれば、風評被害と相俟って、支援者の引き上げが始まることにより、ホテル等の宿泊者が激減し、経営に大きな打撃を受けるのではないかと懸念されていました。
 9月になって、金融機関の方などからその後の状況を伺うと、現時点に限れば、懸念されていた支援者の引き上げはあまり大きな動きにはなっておらず、一方で、特にキャンペーンなどから、最近になって本年6月の平泉の世界遺産登録の効果が出ているようで、修学旅行客は減少するもののバス旅行者は増加すると見込まれているとのことでした。なお、支援者の撤退があまり進まないことは、ホテル、旅館業にとって収益の安定面では悪くない状況ですが、他方、平泉観光で訪れた方々の宿泊所が確保できないといった別の問題が発生しているとのことでした。確かに、平泉に近い一関市内では関東地区などの他県ナンバーの車が多く見られますし、平泉からそう遠くない人気観光地の遠野などでも、宿泊所確保が難しい状態が続いています。
 このように、岩手県では、平泉やその周辺に世界遺産登録効果は見られるものの、他は、東北の他の観光地と同様に風評被害を受けており、また大津波により壊された三陸海岸観光の宿泊所は未だ回復していないといった問題があります。更に、岩手の観光で切り離せないのが三陸の海の幸ですが、津波で流されてしまった漁船の確保が出来ていないために、地域によっては「うにの口開け」(漁の解禁)が行われなかったり、冷凍・冷蔵施設の回復が急務の課題となっているなどの大きな問題が残っています。観光地の宿泊所からの支援者の引上げはいずれ起こりますが、それまでに風評被害等の諸問題が解決されることが、岩手・東北の観光の振興・再生を図るために最低限必要なことです。

(中尊寺 金色堂覆堂)

(盛岡市内 中の橋周辺)

 東北の紅葉は本当にきれいです。岩手県内にも八幡平を始めとして、紅葉の素晴らしいところが多くあります。また、北東北の中心都市の一つである盛岡市は、市内の真ん中を流れる川に約200kmを遡上してきた鮭の姿が見られるなど、都会からいらっしゃる観光客には魅力的な観光地だと思います。このほかにも、八幡平、小岩井農場、三陸海岸、遠野、花巻温泉等多くの温泉地などの素晴らしい観光資源があります。なお、ご参考までに、盛岡地方の方言で「おいでください」は「おでんせ」或いは「おでって」と言います。
 出来るだけ速やかに、風評被害問題、人気観光地での宿泊所問題、沿岸部での宿泊施設の再生問題が解消され、また岩手観光の重要な要素、魅力である美味しい三陸の魚についても元の状態に戻って欲しいと願うばかりです。そのために、盛岡財務事務所として何ができるか、職員全員で悩み、考え、行動したいと思います。

盛岡財務事務所長 永石 進

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